
写真展案内
写真展のテーマは、狭山丘陵というアニミズムに満ちた森の多面的な姿である。狭山丘陵は、新石器時代や縄文時代の遺跡が散在していて、人間の歴史が刻まれている場所である。同時に、狭山丘陵の東西を通る荒川と多摩川の分水嶺があり、北方系や南方系の樹木が混在する場所でもある。激減しているものの、古代にルーツがある希少生物も生き延びている。アニミズムの世界観とは、石や樹にも霊魂・アニマ(動かす力)が宿るという考え方である。里山から丘陵に深く分け入ると、風に揺れる木々の動き、鳥の声、水の音や匂い、石や土の温もりなど、呼吸するアニミズム世界が肌で感じられる。そこには森と沼に棲むモノ同士の対話だけでなく、モノと人間との対話も可能な世界がある。
山襞から滲み出る水やあちこちで湧き出る水たまりとせせらぎ。太陽、月、台風一過で踊る蜂と花、上から降ってきたお喋りカマキリ、一心不乱に網掛けをするクモ、月に慰められて眠るカモ—―沼地と森の中では、生き物だけでなく、風、光、音、水、土も写してほしいと言っている。森にいるモノたちの声を聴き、樹々などが送ってくれるシグナルを受け取って、私はただカメラのシャッターを押すのみである。
(出展枚数 カラー60枚)
【高橋美保 略歴】
1998-2010年 二科会員大橋治三氏に師事
2011年 - 現代写真研究所 尾辻ゼミに所属
写真展
2011年 女性3人写真展(街角) 東京交通会館
2014年 2人写真展「台北ダイバーシティ」アイデムフォトギャラリー「シリウス」
2017年 2人写真展「時の庭」日本女子大学成瀬記念館 同時に図録を刊行
2019年 写真展「台湾…生の廻り舞台で」アイデムフォトギャラリー「シリウス」
写真集
2021年 「インド・ラジャスタン地方 2009年 タール砂漠の人と街」
2023年 「MINDSCAPE in the woods 武蔵野・狭山丘陵」
■ギャラリートーク「森の言葉」開催
日時:11月4日(土)14:00-15:30
高橋美保×尾辻弥寿雄(現代写真研究所講師)
予約不要