写真展案内
本展では、立木義浩がここ数年、おもに国内および東京都内で精力的かつ継続的に撮影を重ねているスナップショット群の中から、新作約40点を展示します。
立木は1950年代にカメラマンとしてのキャリアを開始して以降、出版・広告の分野を中心に、芸能、ポートレイト、ヌード、ファッションなどの表現を通じて、日本商業写真の発展に貢献し続けてきました。70-80年代頃からは、国内外を問わず、仕事で赴いた旅先などで現地の人物や風景を積極的に撮影するようになります。2000年代以降はいくつかの雑誌連載の仕事をきっかけに、自らの拠点である東京でも日常的にスナップを撮りためるようになっていきました。
これらの作品は過去開催された多くの個展や、『風の写真気』（日本写真企画、2006）『ありふれた景色』（ピエ・ブックス、2007）『動機なき写真』（日本写真企画、2016）といった作品集にも見ることができますが、本展もまたこうした系譜に連なる至芸のひとつと位置づけることができます。コロナ禍という先例なき混沌を経て、あらゆる地表面に現われる汲めども尽きぬ相克と衝突。そのあいだをただただ通りすぎてゆく遊歩者としての精神は変わらず、しかしその一瞥と拍動する人差し指は、つねに時代を鋭く、美しく、可笑しく切り取ることを止めません。
なお本展の開催と合わせて、新作写真集『七つの真実にまさるひとつのきれいな嘘を』（I・I・F）が発売されます。同作は、本展に展示された作品を含む新作スナップ群およそ1,000枚の中から、立木にゆかりのある7名の選者が各16ページを自由に構成したユニークな内容の一冊。展示会場での販売も予定されています。
“東京が、街全体が、撮ってくれ、撮ってくれ、と語りかけてくる。昔は撮らされてるのがイヤでしたが、いまは望んで手招きするほうへ向かっていくのです。ただの代弁者にならぬよう細心の注意を払いながら。
このデジタルの時代に、シャッターを一日二度しか切ってはならないという法律などありえず、なんぼ撮っても消せばいい。これは堕落の始まりでもあるのです。使われた一枚は、使われなかった死屍累々の写真たちによって底上げされ、支えられている。それなのに、まったく挨拶がありませんね、コイツらは”
──作家インタビューより
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