
2014年7月9日から105日間、24か国を回って撮影した市場の写真です。
エクアドルで出会った路上での髭剃り売り。ブラジルのベレンでは、市場の入口で軍警が自動小銃を持って立ち、すぐ近くでマイク片手にCD売りが歌い踊っていました。通りを行けばわずかな日用雑貨を吊り下げて売り歩く行商人にも出会いました。南米の市場や通りは喧騒と異様なほどの活気に満ちていました。
カンボジア、シアヌークビルの市場では、明け方、私たちの客船を全速力で追い抜いていった木造魚船の荷揚げした新鮮な魚が並んでいました。狭い通路の真中に、地雷で足をやられた男性が台車の上に横たわり物乞いしていました。1日働いて、1000リエル(約30円)ほどの収入しかない人もいる国、1ドルで買ったマンゴーの量の多さに驚きます。
カンヌやエーゲ海の真っ白な真珠ミコノスでは、洗練された商品が並び、売り子にもお客にもエスプリや気品を感じましたが、旧市街や裏通りのパン屋さんのバゲットでは、まちの普段の生活の味がしました。
オマーン・サラーラ乳香市場のエキゾチックな甘い香り。ヨルダン・アカバ市場では、強烈な香辛料の匂いを味わいました。
旧社会主義国ブルガリア、ルーマニアのお店での沈滞と沈んだ眼差し、同じ黒海沿岸でもウクライナ・オデッサのまちでは、内戦中とは思えないゆとりや明るさがそこにはありました。
旧市街の市場には、生きることに懸命な庶民の姿があったかと思うと、新市街のショッピングセンターには、ブランド品があふれ、高級車で乗り付けショッピングを楽しむ人たちがいます。同じ国とは思えない、まるで別世界のようでした。私は市場で、内戦、戦争の影、平和の尊さも実感しました。市場は、歴史、価値観、生活を投影した地域と暮らしの縮図でした。
写真展では、現在を投影する世界の市場を、ぜひご覧になっていただければと思います。
<出展枚数 カラー50枚>
夏目安男略歴
1950年生まれ。法政大学卒業。2012年12月株式会社きかんし退職。「私の通勤日記-新砂・辰巳・夢の島」(2011年アイデムフォトギャラリー)、「草原の風-SERUUN SALKHI」(2014年コニカミノルタプラザギャラリーC)、日本リアリズム写真集団会員