加藤文彦 写真展

石のデザイン ―形と色の交響―

2015/05/07 ~ 2015/05/13

sirius_vol580

ロマネスクなら重厚な半円形のアーチと分厚い壁に囲まれた暗い堂内、ゴシックなら尖ったアーチに薄い壁を支える軽快な飛び控え壁(フライングバトレス)と高く大きな窓というように、基本的な特徴はどの建物でも同じです。

 しかし、西洋教会建築のデザインは、建物ごとにはっきりとした独自性をもっています。

 使われる石材は単に堅く長持ちする資材として、広い大きな空間を支える構造材としての機能を無機質に果たすだけでなく、材質は変化に富み、色も微妙に異なり、木の文化に育ったわれわれ日本人でさえ、硬さや冷たさ以上に、軟らかさと温もりを感じて親近感を抱くことになるのです。

 建物各部分の持つ宗教的な意味を知らなくても、ダイナミックな石の空間は直線と曲線といった単純な幾何学的構成要素に分解することが無意味に思われるほど、豊かな有機的組合せで魅了してくれます。

 そこに闇と光の交錯(こうさく)が加わることでさらに次元が増し、さながら形体と色彩の音楽となってわれわれの五感に優しく、また激しく迫ってくるのです。これはまさに写真の可能性に対するチャレンジです。

 今回見て頂くのはイタリア、フランス、イングランドおよびスコットランド各地の、5世紀から14世紀ごろに建てられた聖堂とその廃墟で撮ったカラー写真40点です。

 これまで写真集やガイドブックなどであまり紹介されてこなかった、知られざる名建築・デザインも見て頂けるはずです。

 石に刻まれた唐草模様ひとつとってみても、見た瞬間、われわれの記憶の中で、伝統の風呂敷や(ふすま)、さらに新しいスマホケースなどにあしらわれた唐草模様がざわめき立ち、心が踊りはじめます。

 同じように、一つの柱や天井や壁の画像が、見る人の記憶のなかにある別の場所の形や色を生き返らせ、眼前にあるものとないものとが想像力(イマジネーション)の中で響き合い、新しいカクテルが生まれます。写像を見る人が、中世の石工さんの共同クリエーターになる瞬間です。

 ご高覧のうえ、ご講評を頂ければ幸いです。                        (カラー40点)

加藤文彦 プロフィール

1947年神戸市生まれ。大阪府在住。京都女子大学名誉教授。英国美術史家教会会員。英米文学、文芸作映画とイギリス19世紀絵画の研究と教育に従事するかたわら、29年前より、ラヴェンナ(イタリア)のビザンツ様式建造物群を皮切りに各地の古建築を撮影してきた。

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