中島康夫 写真展

「日常の辺縁、記憶との邂逅」

2026/02/12 ~ 2026/02/18

スナップショットを撮り始めて14年が経ちます。写真の基本に立ち返るべくストレートな写真に取り組もうとの考えによります。「日常の身の回りを撮ること」「ステレオタイプな表現は避けること」の2つのことを意識し、道端に生えている雑草や空き地に打ち捨てられたゴミ、崩れかかった廃屋や路地裏等のうらぶれた光景など、日常において人が注意や意識を払わないような物事を対象とし、撮り続けてきました。 

当初、撮影コンセプトは漠然としており、そのような写真を撮ることの意味を理解していませんでしたが、今ではつぎのような考えに至ります。 

雑草やゴミなどを撮るということは、日常における意識の中心となる物事ではなく、その周辺部分を探ることにより、逆説的に日常の本質的なものを認識できるのではないか?例えで言い換えると、世界を<饅頭>に見立てるならば、饅頭の周りの<皮>の部分を調べることにより、中身の<あんこ>(=本質的なもの)を捉えようとする考え方です。 

この<饅頭の皮>の部分にあたる事物——日常において意識の隅に追いやられ、排除され、無視されているようなもの——が存在する場所を「日常の辺縁」と呼ぶこととし、それは私の撮影コンセプトとなり、今後もその方向で写真を撮り続けるつもりです。 

ところで、最近、自分の撮った写真を見返してみると、前述のコンセプトによらない、感覚的、直感的な写真が増えてきていることに気付きました。 

日常、私(たち)の意識は、今日の天気や晩のおかずなどの身近なことから、事件や事故、政治や経済、世界情勢など、1日のうちに様々な事柄に関心を示しては、次々と移り変わっていきます。 

写真を撮ろうと街を歩いている時の意識も同様であり、終始コンセプト(=理屈)が念頭にあったとしても、目の前に自分の<好きなもの>が突然現れたなら、意識は理屈より感覚に囚われ、思わずシャッターを押してしまうことになります。 

私の場合、この<好きなもの>に相当するものは<記憶>です。記憶の中にある「遠い昔に見た物や風景」を想起させるような光景との遭遇、それが多くの場合動機となっているようです。 

遠い過去の「記憶との邂逅」、それを動機とした写真は、「ノスタルジア」と評されるかもしれませんが、感傷や後ろ向きの気持ちによるものではありません。むしろ、理屈が意識から剥がれ落ち、感性が露わになった時の「解放感」を感じることもあり、そうした感覚的写真もまた「よし!」とするようになりました。 

私も今を生きており、日々様々なものに意識の関心は赴きます。平穏に思えるこの暮らしも世界と繋がっており、遠くパレスチナやウクライナの惨劇と無関係ではありません。そのような大きな問題も含め日々起こる様々な事柄は、眼に見えぬ微小な欠片となり飛散し、私の身の回りにも降り注ぎ、道端に生える雑草の陰にも降り積もっているに違いない。と私は常々思っています。 

(展示枚数 約50点) 



中島康夫 略歴 
1952年 東京生まれ 
1976年 多摩美術大学デザイン科(プロダクトデザイン)卒業 
1978年 多摩美術大学大学院デザイン科修了(修士) 
現  在  有限会社エムワンデザイン取締役、デザイナー 
個展、グループ展多数開催 

アクセス

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住所

〒160-0022
東京都新宿区新宿1-4-10 アイデム本社ビル2F
TEL:03-3350-1211
FAX:03-3350-1240
東京メトロ丸ノ内線「新宿御苑前」駅下車

アクセス良好

開館時間

開館時間 : 10:00~18:00
(最終日 : 10:00~15:00)
休館日 : 日曜日・祝日の一部(お問い合わせください)

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