フランク・ディテューリ 写真展

「Fata-妖精-」

2015/09/24 ~ 2015/10/07

sirius_vol599

 フランク・ディテューリほど若い時の作品から継続的に日本に紹介され続けている写真家は少ないのではないだろうか。今日の情報化社会は、見る側にも作る側にも、そして両者をつなぐ画廊にとっても継続は厳しいものになっている。

 まずはフランク。数年ごとに開かれる展覧会で発表される作品はどれも違う印象のものばかりである。隣接する写真展では違いはそれほど大きいものではない。しかし、日本で最初に紹介された赤外線フィルムを使った構成的な作品と、今回のカラーの作品とには大きな飛躍がある。これはフランク自身が成功に甘えて同じ場所に留まることを潔しとしないアーティストとしての成長を意味している。

 フランクとシリウスのディレクター山下洋一郎との出会いは私たち受け手にとっても運命の出会いだったと言っていいだろう。フランクの作品に惚れ込んだ山下の、継続して紹介し続けるという強い意志があるからこそ、私たちはフランクの個々の作品を楽しむばかりでなく、彼の成長をいっしょに見続ける幸運があるのである。

  今回のタイトルはイタリア語「Fata」である。英語ではFairy、つまり妖精である。Fairy taleのフェアリー。夜の森を散歩するフランク、愛妻モニカ、そして子供のいない二人にとっては娘同様の愛犬デイジー。森で道に迷ったデイジーは獣に変身し、モニカは赤頭巾に変身する。

 初期の赤外線フィルムの構成的でありながら現実を抽象的な絵画的なイメージに変身させた頃から、やがて構成よりも現実の向こうにある神秘性に視点が移り、神秘性はやがて瞑想につながってきた。数年前からカラーに挑戦してきていたが、色の持つイメージが豊かな情感に火をつけたようである。今回は豊かな情感を支える器として物語が全面に出てきたようである。

 しかし、物語=言葉は初期から一貫してフランクを支える大きな要素であったことを私たちは思い出す。アメリカ時代、日系の詩人のフルタ・ショウイチとのコラボから生まれた詩写真集、イタリアでのデビューを飾った映画監督であり詩人であったピエル・パオロ・パゾリーニの詩に写真をつけた詩写真集。20歳前後に母親の故郷であるイタリアの田舎町を撮った写真集では、英語、イタリア語、そして故郷の方言が使われていた。フランクは写真集のところどころに印象的な言葉を載せる。この言葉は詩といっていいだろう。

  今回のFata で私たちが感じる印象は自由である。ここには方法論や技術からは一歩抜け出て、自由に写真を楽しむフランクがいる。もしかしたらフランクは文人の域に到達したのかもしれない。文人は東洋の詩人であり、哲学者であり、画家である。この展覧会に合わせて来日するフランクには、文人を意識しているかどうか聞いてみたいものである。            (宮山 広明 記)

フランク・ディテューリ プロフィール ニューヨーク在住イタリア系2世で、フロレンスのリベラ美術アカデミー、グッゲンハイム美術館のLTA(Leading Through Art)プログラムなどで教えている。 また彼の作品は、多くの個人収集家、美術館などのコレクションに加えられており、アメリカ、ヨーロッパ、アジア諸国で展覧会や数多くの写真集や本が出版されている。 宮山 広明 版画家、プリントザウルス国際版画交流協会代表

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