高橋 美保 写真展

「台湾・・・生(せい)の廻り舞台で」

2019/04/25 ~ 2019/05/08

vol766
台湾には、人を引きつけてやまない魅力ある歴史都市がいくつもあります。とりわけ台南は昔の5つの川に沿って壮麗な廟が続き線香の香りが漂う古都です。台湾の大都市のなかでは、最も伝統的な街並みが残っています。

しかし著しい経済成長と民主化が進んだこの10年間は、街を歩く度にその激変ぶりに「今は昔の」と驚いてばかりです。台南、高雄、台北にあった貿易で栄えた街角は静かに消えていき、観光客の街に生まれ変わろうとしています。台湾人の人生観・世界観においても、強いきずなで結ばれた共同体の観念が急速にうすれて、誰もが個人主義的な独立観念に慣れさせられています。

それでも台湾らしさ、つまり台湾独特のものは残っています。一つは17世紀以来、大陸から渡来した台湾人と原住民族の軋轢、移民同士の争い、諸外国による支配など深刻な政治的葛藤を経てきた台湾の人々には歴史が刻んだ重層的な記憶があり、社会に対し熱烈になる気持ちが強いと感じさせられます。

もう一つは山・海などの自然が豊かで美しいことです。どこでも植物が繁茂し、原色の花や実があふれています。街の建築物・ファッションは気候・風土の影響で装飾性が強く、彫刻・文学・音楽など台湾独特の文化を形成しています。しかも各地にそれぞれ個性ある伝統的な町があり、その違いを写すのも興味深いのですが、今回は、台南を中心に、台北の周辺の旧市街を加えて、撮影した写真を展示します。

撮影したのは昔ながらの面影の残った街で、近代的な主要通りから一歩入ったところにある日常生活の営まれる居住空間です。そこを狭い路地が縫うように複雑に走り、住民が安らげる街になっています。住宅の間に、大衆廟があったり屋台があったりします。柱廊のある歩道は分節化されて思い思いの椅子・テーブルを並べて、地域の人がお茶を飲み、おしゃべりをしたりする姿が見られます。最近の激しい開発によって、このような地域でも日々、何かが壊され何かが生まれています。街は一つの時間の中で、古いものや新しいものが錯綜して進んでいきます。そこが魅力を振りまいて、人を引きつけます。画一的に「明治村」になってしまうと、面白味がなくなります。街がきれいにまとまってしまわないようにと願いながら、同時代人として台湾の人に強い共感を抱いてシャッターを押しました。

(カラー55点)

<高橋 美保 略歴>

・1999年~2010年 写真家大橋治三氏(二科会会員)の写真教室に入り写真を学ぶ
・2011年から 現代写真研究所尾辻弥寿雄氏のゼミに在籍
・日本リアリズム写真集団(JRP)会員

アクセス

Access

住所

〒160-0022
東京都新宿区新宿1-4-10 アイデム本社ビル2F
TEL:03-3350-1211
FAX:03-3350-1240
東京メトロ丸ノ内線「新宿御苑前」駅下車

アクセス良好

開館時間

開館時間 : 10:00~18:00
(最終日 : 10:00~15:00)
休館日 : 日曜日・祝日の一部(お問い合わせください)

アクセスについて詳しく見る