
手賀沼の湖沼周囲は38キロ、流域面積は約144平方キロ。1981年に写真を撮る面白さを味わい始めた頃から2000年頃まで、全国で最も汚れた沼として知られていたのですが、それでもこの大きな沼が見せる表情は、私の心の中の原風景でもありました。なかでも曙橋から水の館まで目測で約3キロのあたりが私が最も好んだ撮影場所でした。
暮れなずむ沼辺を漕ぎゆく笹舟。水面を茜色に染め、幾重にも織りなす光彩の美しさ。その日の天候によって変化する夕焼け模様など、春夏秋冬、異なる美しい輝きを見せてくれます。その光景は、私の心をとらえて離さず、18年あまり、期待し、想像しながら撮影地に向かう至福の時でした。
また、遊歩道を行き会う人々が交わす挨拶が清々しい朝は、私の大好きな光景でもあり、和やかな癒やしの散歩道でもありました。現在は、沼も浄化され、周囲も現代的に変わりつつありますが、沼の表情はあまり変わりません。これからも多くの人々の心を癒やすことでしょう。
ただ、鳥や干し網も少なくなり、撮影するには少し寂しくなってきました。私が18年間撮影した写真も、今となっては見ることができない、記録となってしまいました。この写真集から以前の手賀沼を想像し、思い出していただければ幸いです。