ジャズの雑誌がキッカケでニューヨークのハーレムを知ったのは40年以上前。1984年、22歳の時、興趣が尽きず、会いたい一心で向かった。
マンハッタンのセントラル・パークの北からアップタウンへ広がるセントラル・ハーレム。当時は華やかなニューヨークとは対照的にスラムと言われ、黒人の街だった。
人の多い大通りを歩き、人を見て行くにつれ、怖い危ない先入観は捨てた。「毎日来てるな」と会釈してくれる人も現れた。不安を拭えずも横道に足を伸ばす。鋭い視線を感じるも、人懐こい笑顔の知り合いも増えた。でも、撮りたいと声をかけても「写真を売るためか?」と撮らせてもらえない。信頼されたくて何度も同じ場所を歩いた。他人でもブラザー、シスターと呼びあう人たちだ、仲間にならないと。一体感が必要だ。
再開発が進んだ今でもそこでは日曜日の教会には着飾った紳士淑女たちがゴスペルに全身全霊を奮わせ、住人たちがたむろするアパートの入口階段があり、かけがいのない時空間を楽しむブロック・パーティーがある。彼ら黒人だけだからこそできた、継がれ続ける絆を表すコミュニティ。
時は流れ、住人や環境が変わってきても、一人一人の「我が心のハーレム」を感じられる。
(展示枚数 モノクロ48枚)
写した場所 :Harlem, New York , U.S.A.
写っているもの : Harlemの人々
テーマ:コミュニティ
松井正紀(まつい まさき) 略歴
1962年 東京都足立区生まれ 日本写真家協会 会員