アイデムフォトギャラリー「シリウス」では
千野素行 作品展 「幻想の世界 ―ポスタリゼイション・フォト―」
期間:9月23日(木)~9月29日(水)
を開催中です。
今回、写真家の千野素行さんにお話をうかがいました!
右が千野素行氏。会場にいらしたお客様とともに。
■「ポスタリゼイション」とは?
まるで写真と絵と版画が融合したかのような不思議な味わいを見せてくれる
ポスタリゼイション・フォト。
千野氏自身も「光による版画」と表現しています。
実は、この「光による版画」を一つ完成させるまでには、
様々な工程を経なければなりません。
簡単にご説明すると…
・まず写真をモノクロで撮影
・撮影した写真を分解し、様々な階調のポジ・ネガを作成
→これらをそれぞれ重ね、露光時間を調節して密着焼きすることで、
様々な段階の濃度のフィルムができあがります。
・カラーフィルムへのまとめ(撮影)
専用の装置とカラーフィルターを使い、
一色ずつフィルムに焼き付けていきます。
分解していた画像が重なり、最終的に一つの画像になります。
詳しい説明はぜひ千野素行さんのHPをご覧ください。
■写真歴、70年以上!
10代の頃(昭和10年!)から写真を始めたという千野氏。
なんと、70年以上に渡り「写真」を撮られているそうです。
昭和28年からは自己流でカラー現像を始めるなど、
さまざまな実験的な試みをされてきました。
ポスタリゼーション技法に情熱を傾けるようになったきっかけは、
『Red Nude』という作品。(作品集に載っています!)
「作品をカラーで表現したい」という思いから、
試行錯誤で道具も手作りし、赤・黄・青の色付けに成功した作品だそうです。
それを機に、「ポスタライズ(=ポスターをつくるという意味で使われるそうです)」に
夢中で取り組まれるようになったのだとか。
いかにうまく画像を分解し、効果的に色をつけるか、研究の日々が続き、
ようやくポスタリゼーション技法に成功したのは昭和53年。
その後、現在に至るまで情熱的に作品づくりに取り組まれています。
■ずばり、「ポスタリゼイション」の魅力とは?
やはり、幻想的な雰囲気を醸し出せる(=イリュージョン)ところ。
そのままの写真ではリアル(現実)だが、
ポスタリゼイションをすることでフィクション(非現実)になる。
上記の質問をぶつけたところ、
千野さんはこのように答えてくださいました。
確かに、どの作品も新たな色がのることで、
まったく別の世界を感じさせてくれるものになっています。
見れば見る程その奥深さに引き込まれ、まさに「幻想の世界」だと感じました。
■注目の作品は…
千野さんの作品では、風景、街を行く人、建築物など、
さまざまな被写体を楽しむことができます。
中でも渾身の作を2点挙げていただきました。
1、「創生の刻」
青森県の千畳敷で撮影した同作品。
本来は白っぽい色の岩と背景に色をのせることで、
地球創世期を感じさせる迫力ある作品に仕上がっています。
2、「幻影」
駒沢公園での一枚。
手前にいる鳩と、遠くに去っていく人、
そして太陽光が生み出した不思議な色合いが
絶妙な組み合わせになっています。
ちなみに、美しいポスタリゼイション・フォトに仕上げるためには、
「写真としての美しさ」があることが絶対の条件なんだそうです。
また、出すのが最も難しい色は「金色」だとのこと。
さまざまな色を使い、より美しい「金色」に近づけているのだそうです。
この点にも注目して作品をご覧になると、
よりお楽しみいただけるのではないでしょうか♪
■今後の取り組みについて
現在、「日本ローライクラブ」の会長も務めていらっしゃる千野さん。
撮影会に参加し、新たな作品を撮影されているそうです。
今後取り組みたいことについてうかがうと、
太陽の光を虹として取り込み、
アレンジをして雰囲気のある作品を作りたい!
とのことでした。
ポスタリゼイションにより生み出された、数々の幻想の世界。
ぜひ皆様もアイデムフォトギャラリー「シリウス」に足をお運びいただき、
ご堪能いただければと思います。
(この記事は佐相が担当しました)